【ジョジョ7部考察】聖人の遺体はなぜ基本世界だけ?D4Cの謎と並行世界の真実 スティール・ボール・ラン

【ジョジョ7部考察】聖人の遺体はなぜ基本世界だけ?D4Cの謎と並行世界の真実

『ジョジョの奇妙な冒険』第7部「スティール・ボール・ラン」において、多くの読者が抱く疑問。それは、ファニー・ヴァレンタイン大統領のスタンド「D4C」と、物語の鍵を握る「聖人の遺体」にまつわる謎です。


世界の中心、幸福の中心、聖人の遺体


「D4Cの能力は、基本世界の大統領だけが使えるものではないのか?」 「なぜ、あれほど重要な聖人の遺体は、無数にあるはずの並行世界の中で『基本世界』にしか存在しないのか?」

この記事では、これらの疑問を深掘りし、D4Cの能力と並行世界の構造、そして聖人の遺体の唯一性について考察していきます。

前提知識:D4Cの能力と「多世界解釈」

まず、考察の土台となるD4Cの能力をおさらいする。D4Cは、物体に挟まることで隣の並行世界へ自由に行き来できる能力である。これは、量子力学における「多世界解釈」に似ている。ある事象が起こるたびに、起こり得た全ての可能性が別の世界として分岐し、無数に存在するという考え方だ。

しかし、ここに大きな矛盾が生まれる。もし全ての可能性が等価に分岐するなら、ほとんどの並行世界に「聖人の遺体」が存在するはず。しかし、作中では明確に「聖人の遺体は基本世界にしかない」とされている。この矛盾こそが、SBRの多元宇宙を理解する鍵となる。

考察①:ジョジョの並行世界は「対等」ではなく「階層構造」

この矛盾を解く最初のヒントは、D4Cが移動する世界が「対等な並行世界」ではない、という点にある。作中の描写から、ジョジョの多元宇宙は「基本の世界」を頂点とした階層構造になっていると考えられる。

  • 聖遺物の格差: 「聖人の遺体」は基本世界のみに存在する絶対的な聖遺物である。一方で、隣の世界で遺体の代わりに取り合っていた「宝石」などは、他の多くの世界にも存在しうる、より格の低いアイテムであった。

  • エネルギー総量の違い: 「聖人の遺体」は、それ自体が「悪魔の手のひら」を形成し、触れた者をスタンド使いに覚醒させるほどの莫大なエネルギーを秘めている。これは、他の世界には見られない現象である。

  • D4C能力者の唯一性: 隣の世界にもヴァレンタイン大統領は存在するが、スタンド使いであったりなかったりと様々である。そして、世界を自由に行き来できるD4Cを使えるのは「基本世界」のヴァレンタイン大統領だけだ。

これらの事実から、基本世界が他の全ての並行世界に対して、エネルギー的にも運命的にも優位に立っていることがわかる。並行世界の「並行」とは、単に同じ時間軸を進んでいるという意味であり、世界の格が同等という意味ではないと考えられる。

考察②:なぜ聖人の遺体は唯一なのか?考えられる2つの仮説

では、なぜこのような階層性が生まれるのか?特に「聖人の遺体」が基本世界にしかない理由について、2つの仮説を立ててみる。

仮説A:D4Cの能力限界説

これは、「隣の世界はD4Cが能力で創り出した世界である」という説だ。 聖人の遺体の心臓部によって覚醒したD4Cは、次元移動のたびに基本世界とよく似た世界を「創造」している、という考え方。しかし、その強大な能力をもってしても、自らを発現させた大元である「聖人の遺体」だけは再現できず、宝石のような下位存在で代替するしかない、という説である。 シンプルで分かりやすいが、物語の多元宇宙観とは少しズレるかもしれない。

仮説B:聖人の遺体=多元宇宙における「最強の顕現」説

こちらの説が、本稿の結論に繋がる重要な考察だ。 聖人の遺体とは、スタンドを生む「矢」や「悪魔の手のひら」などと同様に、多元宇宙に存在する何らかの超越的なパワーが、形となって現れた「顕現」である、という説。

この考え方のモデルとして、ファンタジー小説の金字塔『エルリック・サーガ』を参考にしている。この物語では、多元宇宙に存在する主人公の「別の側面(顕現)」が、それぞれ異なる世界で異なる人生を生きている。そして、彼らが手にする伝説の武器も、元は同じ「黒の剣」の顕現でありながら、世界によって姿も能力も全く異なっている。ある世界では神をも殺す最強の魔剣ですが、別の世界では特殊能力のないただの剣として顕現する。

これをジョジョの世界に当てはめてみる。 「聖人の遺体」とは、多元宇宙に存在する聖なるパワーの「顕現」であり、それぞれの並行世界でその力の強さや形が異なっているのである。

  • 基本世界: 最もパワーが凝縮された結果、「聖人の遺体」という最強の形で顕現した。

  • 隣の世界A: パワーがそこそこ強く、「スタンドの矢」のような形で顕現した。

  • 隣の世界B: パワーが弱く、「希少な宝石」程度の形でしか顕現できなかった。

  • 隣の世界C: パワーがほとんどなく、何も顕現しなかった。

この説ならば、隣の世界にもスタンド使いが存在する理由(矢のような別の顕現体があるため)や、大統領がスタンドを持っていない世界がある理由も説明できる。「聖人の遺体」は唯一無二なのではなく、数ある顕現体の中で最も強力なものが、たまたま基本世界に存在した、と考えるのが自然と考える。

余談:D4Cは一体だけ? 作中で一度だけ、複数の大統領が同時にD4Cを使っているような描写があったが、その後の設定で「D4Cは多次元でも一体のみ」と説明された。これは設定変更と考えられるが、本稿の「顕現説」に沿って解釈するなら、「スタンド使いの大統領も存在するが、次元移動という特殊能力を持つD4Cは、最強の顕現である聖人の遺体から生まれた基本世界の個体だけ」と考えることができる。

結論:ヴァレンタイン大統領はなぜ「基本世界」に固執したのか

これらの考察を踏まえ、ファニー・ヴァレンタインの旅路を振り返ると、彼の行動原理が浮かび上がってくる。

  1. 軍人時代、砂漠で遭難したヴァレンタインは「聖人の遺体の心臓部」を手に入れ、D4Cに目覚める。

  2. 彼はD4Cの能力で隣の世界を探索。そこで、自分以外のヴァレンタインが心臓部を持っておらず、聖人の遺体に相当するものが存在しないか、あっても宝石のような力の弱いものであることを発見する。

  3. この経験から、彼は「自分のいる世界こそが、真の力を秘めた『基本の世界』である」と確信。多元宇宙が階層構造になっていることに気づく。さらに、その多元宇宙を移動できるの聖人の遺体の心臓部から発現した基本世界のD4Cのみ、と次元移動の中で判断する。

  4. 彼は、この唯一無二の「聖人の遺体」を全て集めることこそが、父の愛した祖国アメリカを世界の頂点に導き、全並行世界に幸福をもたらす唯一の道だと信じる。その大義のため、彼は大統領にまで上り詰め、「スティール・ボール・ラン」レースを開催する。

その計画の決め手となったのが、遺体の来歴を調査する中で行き着いた「この遺体はイエス・キリストのものである」という事実だと思われる。


聖人の遺体を集めると決意する軍人ヴァレンタイン


ヴァレンタインにとって、これは二重の意味で「最初のナプキン」となり得るものだっただろう。一つは、遺体がもたらすスタンド能力や奇跡といった「絶対的なパワー」。そしてもう一つが、キリストの遺体という「誰もが納得せざるを得ない権威」である。

たとえ遺体に超常的な力がなかったとしても、「イエス・キリストの聖遺物を保有している」という事実だけで、世界(特に西欧諸国)はアメリカの指導の下に入らざるを得なくなる。パワーと権威、その両方によって世界の主導権を握れると確信したからこそ、彼は大統領にまで登り詰め、「スティール・ボール・ラン」レースを開催した。

ヴァレンタインにとって「聖人の遺体」とは、単なるパワーアイテムではなかった。それは、自らの愛国心と、多元宇宙全体の幸福を実現するための、パワーと大義を兼ね備えた絶対的な「最初のナプキン(基準)」だったのではないか。

まとめ

  • ジョジョ7部の並行世界は、対等ではなく「基本の世界」を頂点とした階層構造になっている。

  • 「聖人の遺体」は、多元宇宙に存在するパワーの「顕現」の一種であり、基本世界にはその最も強力な個体が存在する。

  • 次元移動能力を持つD4Cは、この最強の顕現から生まれたため、基本世界の大統領しか使えない。

  • ヴァレンタイン大統領は、この事実に気づき、「基本の世界」で遺体を集めることが全多元宇宙を救う道だと確信した。

SBRの複雑な世界観は、この「階層性」と「顕現」というキーワードで読み解くことで、より一層その面白さを増すのではないでしょうか。


出典:荒木飛呂彦原作 集英社出版 ジョジョの奇妙な冒険

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