【スタンド考察】ルーシー・スティールのチケット・ゥ・ライド(涙の乗車券)を解説! ジョジョ7部 スティール・ボール・ラン

チケット・ゥ・ライド(涙の乗車券)/Ticket to Ride


物語の鍵を握る少女ルーシー・スティール。
彼女が発現させたスタンド、チケット・ゥ・ライド(涙の乗車券)は、作中でも特に異質で謎の多い能力の一つだ。

「涙がカッターになる?」「運命を操るってどういうこと?」「最強のスタンド『ラブトレイン』と関係があるの?」

この記事では、そんな「チケット・ゥ・ライド」の基本的な能力から、物語の核心に触れる深い考察まで、ジョジョファンなら誰もが気になるポイントを徹底的に解説&考察していく。

破壊力:E
スピード:E
射程距離:E
持続力:C
精密動作性:E
成長性:C

ルーシーのチケット・ゥ・ライド(涙の乗車券)


本体名:ルーシー・スティール(Lucy Steel)
泣きながら戦うルーシー

チケット・ゥ・ライド(Ticket to Ride)

チケット・ゥ・ライドの涙のカッター

破壊力:E
スピード:E
射程距離:E
持続力:C
精密動作性:E
成長性:C

運命を切り貼りする儚い涙のカッター

スティーブン・スティール氏の幼妻、ルーシー・スティールが発現したスタンド。
スタンド名の元ネタはビートルズ(The Beatles)の名曲、Ticket to Ride(邦題は涙の乗車券)から。
本体名の元ネタはビートルズの楽曲、Lucy in the Sky With Diamondsから。


能力は「涙のカッターで運命を切り貼りして固定する」。

ルーシー・スティールが聖なる遺体の両眼部、両耳部、胴体部、左腕部、右腕部、脊椎部、両脚部、心臓部と融合した後、胎内に頭部を宿すことで発現した能力顕現物質型スタンド。
スタンド像は無いか、一瞬だけルーシーの前に現れた天使のようなスタンドがスタンド像かもしれない。

涙のカッターとは?

チケット・ゥ・ライドは聖なる遺体と融合することで発現する。
いわゆる遺体に依存したスタンド能力で、ジョニィタスクACT1ジャイロスキャンのように、ルーシーが遺体から離れるとスタンド能力は失われる。

ルーシーは聖人の遺体と融合してしまい、さらに夫のスティール氏の命が危ういと知り、泣き腫らしていた。
大統領のボディガード達に襲われたところで、自分の涙をテープのように剥がして切りつけている。
これが涙のカッター、チケット・ゥ・ライドである。

運命を「固定する」力

チケット・ゥ・ライドで切り付けられた人やものは本体および「聖なる遺体」が認めた人物が望む結論に必ずなってしまう。
対象はこれまでの運命を断ち切られ、遺体所持者が願う結末へ運命が「固定」される。
運命を「固定」されると、対象がどうあがいても逃れることはできず、最終的に固定された結末へと事象が収束する。

作中、何がなんでも「冬のナマズのように!」を連呼する大統領のボディガードにルーシーは監禁されていた。
泣き腫らしたルーシーがボディガードに涙のカッターで切り付けると、さまざまな偶然と運の重なり合いで、ボディガードは逃亡するルーシーを捕えることができなくなる。
それでも捕えようとすると、足を滑らせ、扉に頭を打ち、銃が暴発するという不幸に見舞われ、大怪我や命を落とすことになる。

冬のナマズみたいに大人しくさせるんだッ!

逃亡を望むルーシーをどんなに馬車の御者が断っても、チケット・ゥ・ライドで切り付けられると運命が固定されて、たまたまが重なって転び、蜂に襲われ、どうあっても馬車で逃亡を手伝ってしまうのである。

さらに人だけでなくものにも有効で、届けたい対象を願いながらものに切り付けると、紆余曲折を経て必ず届けたい人物へと届く。

攻撃力は皆無だが、望んだことが巡り巡って叶う、因果と運命に関与するスタンド能力である。

能力の真の所有者

ただし、このチケット・ゥ・ライドは上述した通り「聖人の遺体」由来の能力であるため、遺体の所持者に発現するスタンド能力である。

そして、ルーシーは正確には「聖人の遺体」の所持者になっていない。
遺体の頭部を胎内に宿しているために、一時的に所持者のような扱いになっているだけで、作中の時点で遺体の所持者は遺体を集めたヴァレンタイン大統領となっている。

このため、チケット・ゥ・ライドはルーシーが使っているが、その運命の結末を定めているのは上位所持権限を保有するヴァレンタイン大統領である。

このため、作中でルーシーは自力で脱出しているように見えて、大統領の元へと誘導されていた。





ラブトレインの片鱗、吉良と厄災のスタンド

真の能力は「局所的な吉凶の渦を発生させる能力」。

「新世界」の運命について

ジョジョ1部から6部までの「旧世界」は永劫回帰する運命の固定された宇宙であった。
トト神ローリング・ストーン(ズ)といった運命と因果に関わるスタンドの例を見ても分かるように、未来は変えられない世界だった。
キング・クリムゾンが唯一、運命からの一時的な回避をするスタンドであったが、それも因果をリセットするゴールド・エクスペリエンス・レクイエムによって倒されている。

変えられない運命の中で「黄金の精神」を発揮して正義を生きる物語がジョジョ6部までだった。
しかし、プッチ神父の目論見によりメイド・イン・ヘブンが発動する。
プッチ神父の望む、敬虔にして単一な精神と運命の宇宙へと一巡して塗り替えられる直前、徐倫やエンポリオの力で阻まれる。
この際、一巡する宇宙は砕け散り、因果も新たに作られたのが7部以降の「新世界」である。

定められた運命の力は旧世界に比べて弱まり、これまでの因果と因縁もない世界では、これまで確固たる「運命」で縛られていた「吉良」や「厄災」といったエネルギーが脈動し、新たに宇宙を支配する流れとなっている。

運命が砕け散った世界は偏在する多数の並行宇宙へと分割される。
さらにフー・ファイターズが呼ぶところの「知性」の力が偏在するようになっている。
旧世界では生物やウイルスに「知性」は凝固していたが、新世界では植物や昆虫、鉱物や現象にまで「知性」が薄く宿るようになっている。

「吉良(幸運)」と「厄災(不幸)」を分離する能力

前置きが長くなったが、チケット・ゥ・ライドはその新世界で変動するようになった吉良と厄災、幸運と不幸のを局所に引き寄せる渦の能力である。

「聖人の遺体」は所持者に千年王国をもたらす、最初のナプキンを取る、と言われているがその本質は「等価交換」だ。
チケット・ゥ・ライドはその能力の表面的な一部の表出に過ぎないが、それでも事象の因果と、幸運と不幸といった禍福のエネルギーを巻き込み引き寄せる。

チケット・ゥ・ライドの涙のカッターに切り付けられた箇所はこの渦が発生して、未来の因果が巻き取られる。
因果のエネルギーは、渦の中で遠心分離機のようにプラスのエネルギーとマイナスのエネルギーに分離される。

そして、このプラスのエネルギー、すなわち「幸運」と「吉良」は遺体所持者へと弾け飛んで与える。
逆に、マイナスのエネルギーの「不幸」と「厄災」は切り付けられた対象へと降り注ぐ。

結果的に因果は書き換えられ、吉良なるものの望む結末へと辿り着く。
これが運命を操作するかのように見えるチケット・ゥ・ライドの能力の本質である。

幸運が重なり、御者が馬を出して脱走に成功するルーシー

この能力は明らかに、この後に覚醒するD4C-ラブトレイン-の片鱗であり、禍福の天秤と大渦として発現していくことになる。





受胎告知と処女懐胎する少女、ルーシー・スティール

聖母マリアのモチーフ

大統領から聖人の遺体の心臓部を奪いに来たルーシーは、逆に大統領のD4Cによって追い詰められてしまう。
逃げ込んだ部屋の暖炉に遺体が隠されており、偶然それと映し出される茨の冠の頭部の幻影を見つけてしまう。
その瞬間、目が眩むほどの光輝を浴び、背中に白い翼を生やしたまるで天使のような人型の何かに腕を掴まれ、暖炉へと引き込まれる。

大統領がルーシーを見つけた時にはすでに、ルーシーは遺体と融合しており、最後の部位である頭部を胎内に宿して妊婦となっていた。
どうやら天使のようなスタンドはルーシーに「産んでもらう、これは必然だ」と伝えたらしい。
大統領は14歳にして妊婦となったルーシーを見て、「う…産まれて完結」という謎の名言を残す。

処女懐胎で産まれて完結

この一連の流れと、その前の回想シーンでわざわざスティール氏がルーシーに指一本触れていないという話から、聖母マリアの受胎告知と処女懐胎をモチーフにしていることがわかる。

有名な絵画のボッティチェリの受胎告知でも分かるように、大天使ガブリエルが聖霊を通じて、処女マリアに神の子を受胎することを告げられるシーンが元ネタ。
聖霊は輝く光で表され、ガブリエルはやや跪くような姿勢で腕を伸ばし、マリアは驚きと不安な表情で腕を前に突き出す。

大天使ガブリエルっぽいスタンド

ほぼこの絵画の通りの動きをしている。
また、聖母マリアは神の子イエス・キリストの受胎を告げられてから処女にして妊娠・出産をするわけだが、14歳のルーシーも受胎告知から数時間で聖なる遺体の頭部を孕む。

7部のヒロインといっても過言ではないルーシーは「遺体」のパワーを保持する「女神」として、秩序を新たに定める「王」たるヴァレンタイン大統領の「聖婚」の贄へとされる。

涙の乗車券の意味

別観点からも掘り下げてみる。
チケット・ゥ・ライドの涙のカッターであるが、これは弱かったルーシーが反逆と独立のために持つ脆くてささやかな武器、という意味合いがあるように思われる。
回想でも語られているように、ルーシーは実家のペンドルトン家で貧乏のためにマフィアに売られるところであった。
このように犠牲となっていく女性であったルーシーが手に入れて戦う武器が涙のカッターなのである。

売られるという運命から、スティーブン・スティールのおかげで脱するという「乗車券」を手に入れた。
さらに大統領の陰謀に翻弄されるルーシーが戦うための武器を手に入れた。
それが「涙の乗車券」なのである。

元ネタのビートルズのTicket to Rideでは女性が自分から離れ、自立して去っていく様子が歌われている。
Rideはスラングで性的な意味があるため、これは女性が娼婦となって自分のもとを去っていく、という意味ともいわれている。
古来、聖なる娼婦は巫女である。何かしらのつながりがあるのかもしれない。

徹底的に地を這いながら戦い続けた徐倫と異なり、戦う力を自身で持たないまま状況に翻弄され、懸命に生きるルーシーの姿は美しく、応援したくなる。

最終的に、チケット・ゥ・ライドですら大統領に操られ、ファニー・ヴァレンタインが選ばれし能力を手に入れるための聖餐とならざるを得なかったルーシー。
遺体と融合することによって古代の女神ティアマットやイシュタルのように、力の源泉となる。

だが、物語の最後にルーシーは一人の人間に戻り、大きな選択を行うことになる。


出典:荒木飛呂彦原作 集英社出版 ジョジョの奇妙な冒険

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